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アートテラーとに~が行く! 国立西洋美術館「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」。
2020.07.02
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アートテラーとに~が行く! 国立西洋美術館「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」。

皆さま、はじめまして。アートテラーのとに~です。

たまに、「アートテーラー」と間違えられますが、「テーラー」ではなく、「テラー」。

アートの魅力をわかりやすく、かつ面白く、語りで伝える職業です。どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、今回僕がやってきたのは、今年2020年の大本命展覧会、国立西洋美術館の“ロンドン・ナショナル・ギャラリー展”です。本来なら3月3日から6月14日の日程で開催される予定でしたが、新型コロナウイルスの影響でなかなか開幕できず。このまま中止になるのでは?と不安に思っていたのですが、会期をズラし、6月18日より無事開幕することができました(会期は10月18日まで)。いやぁ、本当に良かった! 暗いニュースが多い中で、久しぶりの明るいニュースです。

 ところで、この記事を読まれている方の中には、「そんなにスゴい展覧会なの?」と思われている方もいらっしゃるかもしれません。控えめに言っても、スゴい展覧会です! 冒頭で今年2020年の大本命と言いましたが、ここ10年のうちの大本命と言っても過言ではありません。

 

 ロンドン・ナショナル・ギャラリーは、イギリスを代表する美術館です。年間来場者数は約600万人。世界の美術館&博物館の入館者数ランキングでは、常にベスト10に入るほどの人気を誇っています。コレクション数は、約2300点。実はこれは国立の美術館としてはかなり少ない数字です。しかし、コレクションの質の高さは世界トップクラス。そのどれもが一級品。まさに量より質、少数精鋭のコレクションなのです。それだけに、ロンドン・ナショナル・ギャラリーはまとまった数の作品の貸し出しに慎重で、英国外での所蔵作品展を開催したことは、200年近い歴史の中で一度もありませんでした。つまり、今回の“ロンドン・ナショナル・ギャラリー展”は日本初どころか、世界初の“ロンドン・ナショナル・ギャラリー展”。世界中の美術ファンが羨む美術展なのです!

 

 ではでは、早速、会場の中へと足を踏み入れましょう。

 

 今回出展されている作品は、61点。そのすべてが、初来日作品です。ここだけの話、たいていのナントカ美術館展には、バーターで来たような作品も少なからず混じっています。しかし、今回の“ロンドン・ナショナル・ギャラリー展”はそんなことは一切無し! メンバー全員が主役クラスです。どれも名品ばかりで目移りしてしまいますが、その中でも特に見逃せないのが、まず何と言ってもフェルメールの《ヴァージナルの前に座る若い女性》ですね。30数点しか現存しないフェルメール作品のうちの貴重な一点で、最晩年に描かれたとされる一枚です(描かれている女性は、佐々木希さんに少し似ていますね)。

 

 それから、今回の展覧会の隠し球、ルネサンス時代に描かれた超絶技巧作品《聖エミディウスを伴う受胎告知》も絶対に外せない一枚! 建物の外壁や床、聖母マリアの服の質感、室内にある飾り棚の木目、クジャクとその影.....などなど、画面のいたるところに超絶技巧が盛り込まれた絵画です。この1点をじっくり鑑賞しているだけで、おそらくあっという間に時間が経ってしまうことでしょう。ちなみに、作者のカルロ・クリヴェッリは、人妻を誘惑した罪でヴェネツィアを追放されてしまったという何ともスキャンダラスな人物。

 

 そして、何と言っても今展の目玉となるのは、ゴッホの《ひまわり》。展覧会のトリを飾っています。ゴッホは共同生活を送る予定だったゴーガンの部屋を飾るため、全部で4点の《ひまわり》を描きました。この《ひまわり》はそのうちの最後に描かれたもの。作品の出来に自信があったようで、『Vincent』というサインが入っているのが大きな特徴です。ちなみに、2人の共同生活はたった2ヶ月で破綻しますが、その後も手紙のやり取りは続けていたそうで、ゴーガンは自身の作品とこの《ひまわり》との交換をリクエストしたのだとか(結局、ゴッホはその要求に応じなかったそうですが)。ゴーガンがどうしても欲しかった一枚。そう思って観てみると、より心を掴まれるものがありますね。

 

 展覧会をたっぷりと堪能した後は、もう一つのお楽しみ、ミュージアムグッズコーナーへ。まず必ずチェックするのが、ポストカード。美術館に行く方には、共感してもらえると思うのですが、「自分の欲しい絵画がポストカードになっていない」ということは、よくあります(笑)。なので、お目当てのポストカードを見つけたら、即買ってしまいますね。ちなみに、買ったポストカードは自分の家の壁に直接貼って楽しんでいます。

 

 ミュージアムグッズというと、正直なところ、かつてはダサいものが多かったんです(注:個人の感想です)。展覧会のオリジナルTシャツなんか、買ったところで寝間着になるだけでしたし(笑)。それがここ数年で、グッとオシャレになりました。Tシャツもちゃんと外で着たくなるクオリティですし。今回の展覧会では、コスチュームアクセサリーブランド「アトリエ染花」とのコラボアイテムなんかも販売されていました。ゴッホの《ひまわり》からインスピレーションを得て制作されたというブローチやイヤリング。このグッズ自体がアートですよね。

 

【ロンドン・ナショナル・ギャラリー展×パルコ】ひまわりブローチ/アトリエ染花 ¥4,400(税込)

 

 

 個人的にテンションがあがったのは、ギャグ漫画家・和田ラヂヲさんとのコラボグッズ。昔から大ファンでしたが、まさか国立西洋美術館で遭遇するとは(笑)。「とに~」としては、「ゴッホ~」と書かれたシュールなクッションも気になりましたが、悩みに悩んでマグカップを購入。

 

 そのマグカップで紅茶を飲みながら、今、この原稿を書いています。家に帰るまでが、いや、家に帰ってからも“ロンドン・ナショナル・ギャラリー展”です。

 

  

Profile&Information

 

「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」

会期:2020年6月18日(木)~10月18日(日)

会場:国立西洋美術館

開館時間:午前9時30分~午後5時30分 (金曜日、土曜日は午後9時まで) ※入館は閉館の30分前まで

休館日:月曜日、9月23日 ※ただし、7月13日、7月27日、8月10日、9月21日は開 館

問い合わせ:03-5777-8600(ハローダイヤル)

展覧会公式サイト : https://artexhibition.jp/london2020/

 

<注意事項>
・本展の観覧には入場日時を指定した入場券または、すでにお持ちの前売券・招待券が必要です。前売券・招待券はどの日程でも有効ですが、会場の混雑状況により入場までお待ちいただく場合や、入場制限人数に達した場合はご入場いただけない場合もございます。「前売券・招待券用 日時指定券」を購入し、ご希望の入場日時を指定いただくことも可能です。
・国立西洋美術館での本展の入場券や日時指定券の販売はございません。 (入場券や日時指定券は、スマチケ・読売新聞オンラインチケットストア・イープラス・ ファミリーマート店頭 Fami ポートのみでの販売となります

※詳細は展覧会公式サイト : https://artexhibition.jp/london2020/をご確認ください。

 

 

アートテラー・とに~

1983年生まれ。千葉大学法経学部法学科卒。元吉本興業のお笑い芸人。
芸人活動の傍ら趣味で書き続けていたアートブログが人気となり、独自の切り口で美術の世界をわかりやすく、かつ楽しく紹介する「アートテラー」に転向。
現在は、美術館での講演やアートツアーの企画運営をはじめ、雑誌連載、ラジオやテレビへの出演など幅広く活動している。
著書に『ようこそ!西洋絵画の流れがラクラク頭に入る美術館へ』(誠文堂新光社)、『東京のレトロ美術館』(エクスナレッジ)など。

公式ブログ(アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

https://ameblo.jp/artony/

Twitter

@artteller

Instagram

@artteller_tony

 

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