【インタビュー】『マッシュ』編集長 菊池亜希子さん
女優・モデルの菊池亜希子さんが構成・文・絵・モデルを務める大人気ムック本『マッシュ』。今回は2015年10月に発売した新作『マッシュ vol.8』や日頃の制作活動について、また以前Meetscalストアで開催したマッシュのポップアップストア企画「菊池亜希子×PORTER」についてなど、菊池編集長の素敵な想いやこだわりをお伺いしてきました。
—マッシュ Vol.8「かわいいの向こう側」。完成おめでとうございます。ファンにとっては「おめでとうございます」というよりも、「ありがとうございます」だと思うのですが。
あはは、嬉しい(笑) ありがとうございます。
—今回、特集のテーマを「かわいいの向こう側」に決めたきっかけは?
「かわいい」をテーマにしたのは、ちょっと抽象的なんですけど、今までの私の人生の中で、「かわいい」という言葉は、「外してきた」言葉なんです。マッシュvol.8の冒頭でも書いたんですけど、思春期の頃タモリさんがテレビで、「女子はかわいいって言い過ぎだ!」とよく言われていたんです。思春期の頃に影響を受けた人の言葉って、ずっと大人になっても抱えていたりしますよね。その結果、私は「かわいい」という言葉を安易に用いないようになっていったんです。だけど、それでも「かわいい」と言いたくなる気持ちは無視できないわけで。そもそも「かわいい」という言葉は、世の中に溢れかえっていますよね。それって、やっぱり簡単に共有できるからだと思うんです。でもだからこそ、その「共感し合うための道具」のような「かわいい」に抵抗があって、「そこに、本当に心はあるのかい?」と(笑)。今まで1〜7号までのマッシュを読んで頂けるとわかるんですけど、かわいいという言葉をほとんど使っていないんですよ。なんでそれが良いのか、なんでときめくのかっていう心を伝えるために、つねづねもう一歩先の言葉を探していました。それで今回、「かわいい」という言葉と真正面から向き合ってみようと思ったんです。そういった意味では、すごくチャレンジしたテーマですね。「かわいい」という易しい言葉の奥には、一体何が潜んでいるのか…という世界を見つめた一冊になっていると思います。
—マッシュの楽しみの一つであるゲストとのトークパートですが、お相手を選ぶポイントは?
自分が会って心踊る人とか、会っておしゃべりしたい人とか、憧れる人たちですね。また、その号のテーマについて「一緒に考えてくれそうな人」というのもあります。だから毎回ゲストの方とテーマについて話すときは、本当にお茶を飲んでおしゃべりしながら、議論を交わしています。「なるほど!そういうことですね!」、「今わかりました!」とか、本当に一緒に悩んでくれるんです。答えをどんどん探してくれるというか。マッシュの製作期間中は、ファッションページも作りながら、色んな方に会ってヒントをもらいながら一冊作り上げていく感じです。人に会うことはマッシュにとって、とても重要な要素なんです。ひとりでは辿り着けないような答えが見えてくるのがとても楽しいです。
—ブランドを選ぶポイントは?
ファッションページは、いくつかパターンがあって。自分でコーディネートを組むページは、基本的に全部リースに回ります。頭でイメージを膨らませながらスタイリストさんとああだこうだ言いながら、夜な夜なコーディネートルームで作業します。逆に、イメージを言葉で伝えて、あとはスタイリストさんに任せて、現場で相談しながら決めるっていうパターンもあります。気になった洋服のブランドやお店なんかは、日頃からピックアップしてメモに残しています。「いいな」と思った服を着ている人には、すぐに聞いてしまうタイプです。そういう日常のメモ貯金が雑誌づくりに反映されていたりしますね。
—マッシュが「好き」だからOKを出してもらえる。それもマッシュの一つの魅力ですね。
本当にありがたいです。私の責任編集で作っているものですが、マッシュを受け入れてくれる方々がいるから成立しているのだと感じています。そこに甘んじずに、「セレクトするものは本当に好きなもの」だということを、きちんと伝えないと届かない、とつねづね思っています。なので、なかなか人に任せられず、その結果ものすごい少数精鋭スタイルで製作しています(笑)。それがこの雑誌の特徴でもあるし、強みでもあると思っています。
—製作中の秘話はございますか?
今回のマッシュの中では、前髪にちょっとウィッグを着けたりしていて。でも、スタッフもわかんないくらいナチュラルにです。自分でヘアメイクするページもあるので、カメラの前に立つと、「あれ前髪切った?」とか言われて(笑)次にあった時には突然、前髪が伸びている!というのが面白いなと思って。「あれ?いつの間に?」みたいな(笑)そこをしめしめと思いながらニヤニヤしています。
—最後に、ゴールドのドットが印象的な今回の表紙のデザインについて、そのポイントを教えてください。
今回、アートディレクターの田部井美奈さんと、かなり早い段階から「水玉の箔押しでいきましょう」と決めていました。もともと田部井さんは雑誌だけじゃなくて、プロダクトデザインもやっている方で、“本自体が「モノ」としてかわいいもの”を目指して作りました。雑誌というよりも、わりと書籍に近いというか、手に取って持っておきたいとか、飾りたくなるとか、触りたくなるようなものにしたいなと、加工紙でゴールドのドットを敷くことに決めたんです。表紙の候補写真が、いくつか上がってきて、それぞれにドットをかけてみてどれが一番はまるかを見ました。どれも捨てがたく、色々な方に意見を聞いたのですが、見事に票が割れました。実は、その表紙をめくった表2のアップの写真が一番人気で、第一候補だったんです。私もこれは良いと思うし、本屋さんでも目立つだろうって思っていたのですが、最終的に表紙に選んだこの写真がずーっと好きだったんですよ。私の中で最初にイメージしていた、モノトーンの世界にゴールドが押されるっていう、そのかわいさってすごく芯が通っているなと思っていて。最終ジャッジは私に委ねられるので、本当にものすごく悩みました。自分の直感を信じるのか、客観的に判断するのか。最後の最後に、デザイナーである田部井さんは私と同じ意見だったんですよ。迷っていたけど、ずっと一緒に走ってきたデザイナーさんと私の意見が最終的に一致したので、それは迷わず「これでいこう!」、という決断になりました。実際に出来上がりを見て、やっぱりこれにしてよかったなって、素直に思えました。
—さてここで、ミツカルストアにて絶賛発売中の菊池亜希子×PORTER『ポッケサック』のポイントを教えてください。
基本の構造をすごくシンプルにまとめて、あとは個人的に欲しいと思った機能を全て詰め込みました。パソコンの収納スペースがあったり、荷物を横からぱっと出し入れできるファスナーが付いていたりとか。あとは、モノを入れた後に、そのまま背負うことで口が閉まるタイプのベルトで調整できるようになっています。ボリューム感が小さすぎず、かといってリュックに背負わされているみたいなボリュームにもならないように気をつけました。いつも本当に旅行用のバックパックみたいなものを背負っているので もう少しコンパクトなものが欲しいと思って作ったんです。あとは、やっぱり外にポケットがないと1個あるだけでかなり違います。それと、底の形が特徴的なんです。はじめは、バケツ型のトートバッグを背負える形っていう方向で作っていたんですが、背負った時に型くずれしてあまり綺麗じゃなかったので、小判型にすることで型崩れを防げるので、ここはかなりこだわりました。打ち合わせの時も、「絶対平らの方が綺麗ですよ!」って熱弁ふるって、自分で背負ってみて、写真撮ってもらって、「ね?」みたいな(笑)
—かなり交渉されたんですね(笑) 実は、僕も買いたいんですよ。
これは、男子にもすごいいいと思います。大きすぎず小さすぎないサイズ感なので、男子が背負ってもちょうどいいはずです。背負った時の姿勢になじむ感じがすごくいいです。あとは、見た目以上にものが入ることです。アウターとかストールをくるくるっと丸めて入れたりしても、マチがあるので収まるんですよね。あと、裏地がPORTERはオレンジのものが多いですが、これを黒にしてもらったり、金具もスナップも黒にしてもらったりして、洋服に合わせた時に、主張しすぎないように要素を最小限に抑えました。PORTERのこのタンカー生地ってすごく長持ちするんですよ。あんまり痛まないし、耐久性がかなりあって使っているうちに出てくる毛羽立ちとかもほとんどなくて。だから学生の時に使っていたリュックもまだ持っています。すごい生地ですよね。(笑)
—続いて、グッズのひとつであるこの缶バッジのモチーフについてポイントを教えてください。
これは色々とイラストを描いたときの、隙間に描いたイラストで、魚を咥えている猫っていう絵を…どう見ても咥えている絵になっていないけど(笑) なんとなく気に入っていて。普段リュックを背負っている時とかに、そっと付けて連れて行って欲しいな、という想いを込めています。あとは、モノトーンにしたかったので、黒のポッケサックだから白の缶バッジにしました。猫によく遭遇するんですけど、素通りできないんですよ。横目で見て、この子はいけそうだなって(笑) 見極めてそーっと近づいて、「おーよしよし」みたいな(笑) (笑)
—動物がお好きなんですね。
表参道とか渋谷とかの街中にも案外居ますよね。表参道の路地裏とかで、2匹ほどたむろしているのを見つけた時に、「あっ」って思ったら、先に、すごくお洒落なお姉さんが「おーよしよし」をやっていて(笑)、私はその光景をさらにその後ろからのぞいて見ていて、「あのお姉さんがひととおり撫で終わったら行くぞ」、みたいな感じで(笑)
—最後に、以前渋谷パルコ・ミツカルストアで開催された「マッシュのポップアップストア」についてお聞かせください。
そもそもマッシュという雑誌が立体的にショップとして立ち上がるというアイディアが私たちにはなかったので。実現可能だって言われて、「えっ、やりたいやりたい!」と(笑)。 雑誌という紙媒体を作りながら、その活動をもう少しだけ広げて、立体に起こしてみたいという想いは常にあったので嬉しかったです。ずっと雑誌が好きで学生時代を過ごしてきたので、「紙で作る」ということの意味というか、紙として雑誌を作り続けるというのは、意義を持ってやっているんですけど、実際に雑誌に載っているモノを、見たり手に取ったりできる機会があるのはすごくいいなと思いました。もちろん家で、そこに載っているモノをイメージしながら読むっていう、手にすることはできないけど想像を巡らせてワクワクするってことは大切で、ここになにかミラクルが無限に広がっているみたいな。でも、それが一瞬だけポンって立ち上がるっていうのは、なんだかすごく夢があるなあと思いました。できることなら、またやりたいって思っています。
(取材・文/宮城 フランシス 伸)
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